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有田焼(ありたやき)は、「伊万里焼(いまりやき)」とも呼ばれる佐賀県有田町を中心に焼かれる磁器である。伊万里焼の名称は、有田焼積み出しの際、伊万里港からなされていたことによる。泉山陶石、天草陶石などを原料としているが、磁器の種類によって使い分けている。作品は製造時期、様式などにより、初期伊万里、古九谷様式、柿右衛門様式、金襴手(きんらんで)などに大別される。また、これらとは別系統の、献上用の極上品のみを焼いた藩窯の作品があり、「鍋島焼」と呼ばれている。1977年(昭和52年)10月14日に経済産業大臣指定伝統工芸品に指定。
九州旅客鉄道(JR九州)佐世保線有田駅-上有田駅間の沿線から煙突の立ち並ぶ風景がみられる。
「有田焼」と「伊万里焼」
有田、伊万里、波佐見(長崎県)などで焼かれた肥前の磁器は、江戸時代には積み出し港の名を取って「伊万里」と呼ばれていた。現代でも、美術史方面では「伊万里」の呼称が多く使われている。「有田焼」と「伊万里焼」とはほぼ同義と考えられるが、「有田焼」は佐賀県有田町で生産される磁器を指し、「伊万里焼」はやや範囲を広げて肥前磁器全般を指すという考え方もある。
歴史
肥前磁器の焼造は17世紀初頭から始まった。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、多くの藩が陶工を日本へと連れ帰った。肥前国鍋島藩主鍋島直茂が連れ帰った、その中の一人が有田焼の祖とされる李参平(イ・サムピョン、韓国の忠清南道金江出身)である。彼は、1616年(元和2年)(1604年説あり)に有田の泉山で白磁鉱を発見し、そこに天狗谷窯を開き日本初の白磁を焼いたとされる。李参平が日本磁器の祖であるという説は広く信じられているが、近年の学術調査の進展により、天狗谷窯の開窯よりも早い時期から、有田では磁器製造が始まっていたことが明かになっている。
李参平は日本名を「三兵衛」と称し、有田町の龍泉寺の過去帳にも記載されている実在の人物であって、日本で最初に磁器を焼いたかどうかは別としても、肥前磁器の発達に貢献したことは確かなようである。有田では李参平を「陶祖」として尊重しており、有田町には李参平を祭神とする陶祖神社もある。
有田では、初期には当時日本に輸入されていた、中国・景徳鎮の磁器の作風に影響を受けた染付磁器を作っていた。「染付」は中国の「青花」と同義で、白地に藍色一色で図柄を表わした磁器である。磁器の生地にコバルト系の絵具である「呉須」(焼成後は藍色に発色する)で図柄を描き、釉薬を掛けて焼造する。
1637年(寛永14年)に鍋島藩が伊万里・有田地区の窯場の統合・整理を敢行し現在の皿山を形作った。当時の朝鮮半島磁器には色絵の技法がなかったため、肥前の磁器もしばらくは染付や青磁、白磁のみで色絵は作られていなかった。その後、1640年代には技術革新が行われ、色絵磁器が焼かれるようになった。伝世品の「古九谷」と呼ばれる作品群がこの時期、有田で焼かれた初期色絵であるとするのが、20世紀後半以降、ほぼ通説となっている。ただ、「古九谷」は加賀(石川県南部)で焼かれたものだとする説も根強く残る。(この産地問題については、別項「九谷焼」を参照)
万治2年(1659年)より、オランダ東インド会社が伊万里(有田焼)を大量に買い付け、ヨーロッパへ輸出するようになった。これには、磁器生産の先進国であった中国が明から清への交替期で輸出が不安定であったため、日本製の磁器が注目されたという事情があった。
17世紀後半に生産が始まった、いわゆる柿右衛門様式の磁器は、濁手(にごしで)と呼ばれる乳白色の生地に、上品な赤を主調とし、余白を生かした絵画的な文様を描いたものである。この種の磁器は初代酒井田柿右衛門が発明したものとされているが、窯跡の発掘調査の結果によれば、この種の磁器は柿右衛門窯だけでなく、有田のあちこちの窯で焼かれたことがわかっており、様式の差は生産地の違いではなく、製造時期の違いであることがわかっている。17世紀後半には、技術の進歩により、純白に近い生地が作れるようになり、余白を生かした柿右衛門様式の磁器は、輸出用の最高級品として製造された。17世紀末頃からは、金彩をまじえた豪華絢爛な「金襴手」も製造されるようになり、有田の磁器は最盛期を迎えた。
一方、「鍋島焼」は日本国内向けに、幕府や大名などへの献上・贈答用の最高級品のみをもっぱら焼いていた藩窯である。作品の大部分は木杯形の皿で、日本風の図柄が完璧な技法で描かれている。開始の時期は定かでないが、延宝年間(1673年頃)には大川内山(伊万里市)に藩窯が築かれている。
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